切りすぎたの前髪

改めてムスタングと対話して、さらに太い弦を張るのは違う気がするね、という合意に落ち着いた。ためしに.009-を張ろう

このごろは手足からの汗が止まらなくなったり、不安にかられて叫びたいのに声も出なかったり、別段食べたくもないお菓子を買いこんでいたりする。こんな状態になっても周りとの繋がりを断ち切らないように細心の注意を払っている身としては、治す気もなく、ただメンヘラであることをアイデンティティにしている人たちに対して無性に腹が立つ。読書量を増やすだけでなんとかなる問題でも確かにないのだが、彼らには何かに対する畏怖の念が欠落しているように見える。周りを馬鹿にするのをやめるだけでも息がしやすくなる場所だってあるだろうに。
私の悩みは少なくとも6割は方筋肉が解決してくれそうな気がするので筋肉をつけます。

今自分が勉強していることが自分の才覚と全く合っていないように思う。アホみたいな演習量を積めば大抵の学校はちょろまかして入ることができるが、そこでうまくやっていくには入ってからもアホみたいな演習量を積まなければならなかった。入り直して、言語学や地理学を専攻できたらそれは楽しいだろうな、と思うが、26歳になったときのビジョンが全く見えない。一番好きなことを仕事にしろだとか、いやしないほうがいいとか、惑わせる文言が頭の上を飛び交っているけど、「一番好きなこと」の定義すら曖昧になっている頭には何一つとして響いてきやしない。本当は面白い一般教養の授業だけを受けて暮らしていきたい、だがそれは仕事ではない。20代は化学徒として生きる覚悟をしつつある。限界に挑もう。

ドラッグストアの化粧品売り場によく長居する。今の自分には使い道のないものばかり欲しくなる。青や紫色のアイライナー、真っ赤なリップとアイシャドウ、濃紺のマスカラ、こういうものを自在に操れるほどの腕と脇役になってくれるメイク用具が欲しい。
自分のファッションに対する価値観はいささか厳格すぎるのか、髪色ひとつ変えられない。髪色を変えるなら月1はメンテナンスが必要で、その髪色に合う、もしくは染髪をするほどファッションに興味のあると周りが理解してくれる格好をしなければならないと思う。「ファッションに興味があるとわかる格好」は当然今よりお金がかかるし、私の体型だと最低3㎏、体脂肪率は5~6%は落とさないと似合わないどころか物理的に着られないだろう、そして毎朝メイクをしてヘアセットをして……ここまで来ると変身願望より面倒臭さが圧勝するので、結局頭は黒いままである。
戦化粧としてのメイクは好きだ。目の周りに色を乗せ、顔に模様を描き、唇に色を付ける。自分がこれから相手取る存在への敬意を表していると思うし、戦士の仮面を被ることによって生身よりも美しく生き抜いていけるとも思う。
乾燥して唇がひび割れるようになってきたからリップクリームを塗っているのか、リップクリームを使いたくて塗っているうちに唇が乾燥し始めたのか判別がつかない。200円台のものはとろけすぎていて、適切な量が塗れない。使ってみたいリップクリームが今使っているものの値段の2倍はしたから尻込みしている。歳を取るということは柔らかくなくなっていくことだ、剥けた皮を前歯で挟む。

私は自分を好きな場所に連れていってあげたいが、それを許さない自分がいる。無駄に駅前をうろついてはキャリーバッグを引いている人を目で追って、新幹線の発車アナウンスに耳を澄まして、格安航空会社のチケットの値段を調べて、遠くの在来線の時刻表を何枚も突き合わせている。誰にも告げずに3日は家を空けたいのだが、いくら成人とはいえども扶養され保護下にいる身で変な心配はかけられない。ひとりぼっちにならどこにいてもなれるから、誰かに会いに行きたい。