FRONT CHAPTER vol.4

BOOM BOOM SATELLITESのツアー、FRONT CHAPTER vol.4の最終公演に行ってきた。対バン形式のツアーで、今回相手はThe Birthday
The Birthdayにはチバユウスケというボーカリストクハラカズユキというドラマーがいて、2人は元THEE MICHELLE GUN ELEPHANTであることは今更特に取り上げるほどでもない事実だが、ミッシェルがなくなった後の2人を知らない私にとっては軽視できない事実だった。The BirthdayやROSSOなど、もちろん曲を聞く機会を作れはしたのだがなぜかそうする気が起きなかった。イチゴが木になる世界を壊したくなかったからかもしれない。そんなわけで、いわゆる「予習」は1回もせずにライブハウスへ行った。
The Birthdayは1時間ほど、MCほぼなし。基本は4ビートで、時々ギターがうねったリズムを刻んでいるといった印象。自分のいた位置が悪かったのと箱の特性上、ボーカルとギターの音が判別できないほど混じり合っていたが、時折飛んでくる歌声はとても優しかった。チバさんの歌声は、ざらついた色気のある少し自棄気味の歌声だと思っていたが、かっこよさや色気はそのままに何かをなだめて落ち着かせているようなあたたかさが加わっていた。もしこれが「丸くなった」結果だとしたら歳を取るのも悪くはないなと思った。チバさんはギターを置いてハーモニカを手にした後のほうが輝いて見えた。ハンドマイクがとても似合う。動くたびにおかっぱくらいの長さの髪の外ハネがぴょんぴょんするのも印象的だった。全体を見たいのもあって後ろの方に立っていたのだが、チバさんだけを目で追ってしまうのが自分でも不思議だった。ライブ映えするバンドだと思ったが、音源もまた違ったよさがあるのだろうか、たぶんリードギターは音源のほうが綺麗に聞こえるのだろうと思う。
BOOM BOOM SATELLITESは予想以上のライブをしてくれた。曲は主にSHINE LIKE A BILLION SUNSから。『A HUNDRED SUNS』の最後のサビで、川島さんの美しく包み込むような歌声に、わけがわからないほど泣きそうになった。この曲を聞くためにあの場所にいたのだから終わらせてほしくなくて、曲が終わった瞬間に涙があふれてしまった。手元にタオルがあれば躊躇なく号泣していたかもしれない。それからは、こちらにおいで、と言われているような気がして夢中でステージに手を伸ばして跳ねた。中野さんのDJタイムは緩急のタイミングがたまらなく、ひたすら踊っていた。上手側にいたのでよく見えなかったのだが、中野さんは序盤から前方に出て客を煽りまくっていたようだった。普段私はライブに行くと、演者側からの煽りはもちろん、周りのフロアの人たちの動きにも合わせたいのと合わせなきゃいけない義務感がないまぜになっていて、少しきょろきょろしながら体を動かしていることが多いが、このライブ、特に後半では自分が挙げたいときに手を挙げて、飛び跳ねて、手拍子して、自分の踊りたいように踊ることができた。とても久々の感覚で、ライブ観劇の面白さを再発見した気がして、頭から足先まで汗びっちょりになるほど踊った。
打楽器の経験がなく、クラッシュとチャイナとスプラッシュを見分けられないくらいの素人だが、好きなドラマーを聞かれたら福田さんの名前を挙げたい。正確無比に音を叩きこむ姿は本当にかっこよくてほれぼれする。間近で見ると小柄で色白で、そのギャップにもひかれた。
アンコール後の川島さんのMCに救われた気持ちになった。願ってもみないような言葉だったし、そう言い切れるようになったからこそあの声で歌を歌えるようになったのかと思った。前回のツアーファイナルも見に行ったが、その時はファンに「生きてますよ」の顔見世をする意味合いが強いように感じた。だが、今回は「これからを生き抜いてみせる」という宣言を聞いた気がした。覚悟したり、苦難を乗り越えた人のたたずまいは喩えようなく美しかった。
終演は9時手前。もっと長くやってほしいとも思ったが、いざ帰ろうとすると歩くことすら難しかった。行ってよかった、本当によかった、これ以上の言葉が出てこないライブだった。一生忘れていたくないライブだった。