身体、わっかんねえ

物心ついた時からぽっちゃりはしていたが、去年の11月は度を越していたと認めざるを得ない。身長160cmで体重63kg体脂肪率38%、BMI上ではぎりぎり普通体重だが体脂肪率は標準範囲の20〜30%を飛び越していた。手持ちのボトムスが入らなくなり、身近な人間に指摘されてようやく重い腰を上げた。現在は体重57kg体脂肪率28%、数字上では以前のぽっちゃりとした感じに戻った。

ダイエットを始める時、どうせ痩せるなら美容体重まで痩せてみたらどうだろうかという軽い気持ちで、スマートウォッチ連携アプリに目標体重を50kgと入れてみた。消費カロリーが摂取カロリーを500kcal上回る生活を7ヶ月強続ければ達成できる目標である。スマートウォッチ曰く私の1日の消費カロリーは平均1700kcalなので摂取カロリーを1200kcalに収めればよい。1食あたりを400kcal以下にするためには白米(茶碗1杯240kcal)など食べてはお腹が保たないし、甘いものなどもってのほかだ。在宅で8時半から20時まで働いて、準備運動を兼ねた筋トレをして21時からジョギングに行き、ソイプロテインを飲んで風呂に入って寝る。今まで3食しっかり食べて常におやつをつまみながら仕事をしていたので、ダイエット開始後は感覚的には飲まず食わずで過ごしているようなものだった。

体重は減ると嬉しく、増えると悲しい。目に見えて変化する体型にモチベーションを見出して、ダイエットについて考えることが生活の大半を占めていた。風呂に入る前、自分の身体を鏡に映して、もっと細くなれるはずだろうと暗示をかけていた。

アンダーカロリーで日々過ごしていると基礎代謝が下がるため、定期的に好きなものを好きなだけ食べるチートデーを設けることが推奨される。私の体はどうも糖質を欲するようで、チートデーの次の日は血糖値の乱高下に由来すると思われる情緒の不安定さや頭痛に苦しみ、結局甘いものを食べてしまうことが多くなっていた。週末の夜、服用中の薬の副作用で吐き気があるにも関わらず、満腹を超えて食べ物を詰め込もうとしている自分の姿に何度嫌悪感を覚えたかわからない。摂取してしまったカロリーを消費するための運動に時間が取られていった。それと同時に停滞期に入り、カロリー差500kcalを維持しても翌日体重が増えていることもあった。仕事して、食べて、運動する、これだけを繰り返す生活なのにそのどれもに満足感が得られなかった。その期間の平均体重は54kg、体脂肪率は24%で現在よりも目標値には近かったが、軽い気持ちで設定した目標値を達成する意義を見出せなくなったためと別件の体調不良で4月末にダイエットを停止し、GW中は実家で出されるものを食べ、特に運動もしない生活を送った。

身長160cm体重63kg、身長160cm57kg、身長160cm54kg、身長160cm50kg。この数字だけを見て、「全部デブじゃん」と思う人は決して少なくはない。この考え方の延長線上に、自分と同じ身長のアイドルの体重が43kgだと知って『とりあえず納得する』私がいる。彼女と私の骨格が違うのは言うまでもないことで、私が43kgになったからといってアイドルのごとく目を奪われるような美しい身体になれる可能性は低いだろう。だが、4月末までの私は私の身体に体重の数値のみで他人を切り捨てるような無責任な観察者のフィルターを外して見ることができなかった。つまり、つい数週間前まで手放せなかった「目標体重50kg」は私の身体を観察する私がしっかりと掴んでいて、『一度自分が掲げた目標なのに、逃げてまた太る気か?』と振りかざしていたのだ。50kgになった時に自分がどんな体型で、どんな食事をしていて、どんな体調かを考えたことすらなかったのに。

この身体のオーナーになってそろそろ28年が経つが、食生活の変化にここまで体調と精神面が囚われる事態になるとは思ってもみなかった。自分の体型の自認と理想があまりにも幼稚だったせいだ。まだ自我が発達していない部分があるのかと自分のことながら驚いている。

今朝も懲りずに体重計に乗った。冒頭に書いた現在の数値はその時の数値だ。今日は7kmウォーキングして、平日食べるための野菜スープとサラダチキンを作り置きした。やっぱりもう少し痩せたい気持ちはある。自分の身体が進むに快い方向はまだわからないから、運動と節制が自らに及ぼす変化を注意深く見たいと思う。