最近と暮らし

 先月末、3日連続でライブに行った。初日the band apart、2日目THE NOVEMBERS、最終日9mm Parabellum Bulletで至れり尽くせりのラインナップだった。この接点がありそうでなさそうな3バンドだが、MCの題材がほとんど同じだったのに驚いた。どのバンドも『年をとる』ことについて言及していた。
 平均年齢が一番高くキャリアも長いバンアパはいぶし銀のMCだった。「『白髪が増えただの老眼だの言ってると更に老けるよ』って言うけど、白髪が増えたとか手元が見づらいなんて話題はおじさんの特権だ。若作りよりもどう年を重ねるかを大切にしたい」という意味のことを荒井さんが仰っていた。アンコール後、そのMCに感銘を受けたらしい木暮さんが褒めようとするも、内容をぼんやりとも覚えておらず会話が宙に浮いていたのも含めていぶし銀だった。
 ノベンバはうろ覚えの状態で文字に起こすと意味が変わってしまうくらいにナイーブなMCだった。『天使のピクニック』というライブ企画自体がデビュー当時と現在の自分たちを紐づけるためのもので、過去の自分が努力を怠っていたことやなかなかデビュー当時のビジュアルイメージから脱却できないことに対する怒りとやるせなさ、作ってきた曲やメンバーに対する誇りと愛情が入り混じったMCをしていた。私が最後にノベンバを見たのは2010年、恐らくアンプをフルテンにして決して音量を下げていなかった頃だったので、古く狭いライブハウスでは耳が辛かったように覚えている。今回ノベンバを見たライブハウスはその時のものより更に小さかったが、辛さを感じずに音に飲み込まれることができた。「多幸感のあるノイズ」なんて言い回しはよくあるが、その一例として挙げるのに相応しい音だった。過去と現状に妥協せずこれからも続けていくことをしっかりと示してくれた。
 9mmもフルでライブ聞いたのは2010年頃以来だがこの実家のような安心感はなんなんだろうか……。定番のキラーチューンを何曲も持っているからかもしれない。自身のアルバム名『DEEP BLUE』にちなんで、「これからも君たちとも混ざり合って深い青になる」ということを言っていた。無色透明なものでも幾重にも層を作っていくと青色になる。海が青いのはそのせいだ。散乱するような内容物のない人生でも9mmに重ねればその色の一助になれる。赤色のイメージが強いバンドが熟成の結果に青を選んだことがとても嬉しい。バンアパやノベンバとは違いはっきりと年を取ったとは明言しなかったが、その態度は2バンドと同じく積み重ねを尊ぶものであったと思う。